【第2回】「忙しくて病院に行けない」社長の脳と心臓で起きている恐ろしい異変産業医×中小企業診断士 ショート対談

診断士:「A社長に精密検査を促したのですが、『今期の新工場立ち上げが終わるまでは休めない。倒れたらその時だ』と笑って取り合ってくれませんでした」
産業医:「その『倒れたらその時だ』という言葉、現場の医師としては一番恐ろしいセリフです。慢性的な睡眠不足と過度のストレス下にある経営者の体内では、交感神経が異常興奮し、常にアドレナリンとコルチゾールが過剰分泌されています」
診断士:「常にアクセル全開でエンジンを空ぶかししている状態ですね」
産業医:「まさにそうです。その結果、血管内皮が傷ついてプラーク(動脈硬化のコブ)が形成されます。睡眠時間が5時間未満の生活が続くと、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクは2〜3倍に跳ね上がるというデータもあります」
診断士:「経営者は『気合いで乗り切る』と言いますが、生物学的な限界を超えているわけですね」
産業医:「はい。気合いで血圧や血管の破綻は止められません。さらに、前頭葉の血流が低下して正常なリスク判断ができなくなり、経営判断のミスを連発する認知機能の低下も引き起こします」
診断士:「健康を削って働いているつもりが、実は自ら会社の業績を悪化させる判断を下している……。社長にこの医学的事実を突きつけて、受診を最優先タスクに設定させます」
診断士×産業医の視点と解説
経営者の過労は、単に本人の体力を削るだけでなく、企業の意思決定クオリティを著しく劣化させます。
産業医の視点: 睡眠負債と高血圧の放置は、脳のワーキングメモリと感情制御機能を著しく低下させます。経営トップのイライラや判断のブレは、組織全体の心理的安全性を破壊し、社員の離職の引き金にもなります。
診断士の視点: 経営者が病院へ行く時間を惜しんで稼いだ数時間と、突然の心不全で失う数千万円〜数億円の企業価値を天秤にかければ、定期受診と休息は最も投資対効果(ROI)が高い経営行動です。
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