【第1回】欠勤より恐ろしい「プレゼンティーイズム」の正体〜静かに会社を蝕む見えない損失〜

産業医×中小企業診断士 ショート対談
診断士:「産業医先生、先月からコンサルティングに入っているB社なんですが、財務諸表を見ると人件費率が上がっているのに、一人当たりの売上高と付加価値額がここ2年で15%も落ちているんです。現場を視察しても、サボっている社員は一人もいなくて、むしろ全員が真面目に毎日定時前から夜遅くまで席についているんですが……」
産業医:「診断士先生、私も先週B社の全社員と健康面談を行いましたが、まさに典型的な『プレゼンティーイズム(傷病出勤・隠れ不調)』のパンデミック状態に陥っていますね」
診断士:「プレゼンティーイズム……ですか? 欠勤(アブセンティーズム)はほとんどゼロだと総務から聞いていたのですが」
産業医:「ええ。欠勤していれば『病気で休んでいる』と周囲も認識できます。しかし、プレゼンティーイズムは『会社には出社しているものの、心身の不調によって本来のパフォーマンスが半分以下に落ちている状態』を指します。いわば、身体だけ職場にあって頭が働いていない“ゾンビ出社”です」
診断士:「なるほど! つまり経営者は『全員出勤して真面目に働いている』と錯覚していますが、実際には支払っている給与の4割〜5割分が、体調不良による作業効率低下でドブに捨てられているわけですね」
産業医:「その通りです。東大などの研究でも、従業員の健康問題による企業の経済的損失のうち、医療費は1割程度、欠勤による損失も1割程度に過ぎず、残りの約8割はすべてこの『プレゼンティーイズム』によるものだと報告されています」
診断士:「欠勤の4倍もの損失が、経営者の見えないところで毎日発生しているとは……。これは人事の福利厚生レベルの話ではなく、企業の営業利益を直撃する重大な経営課題ですね!」
産業医:「そうなんです。まずはこの『見えないコスト』の実態を暴き、現場のパフォーマンスを正常に戻すメスを入れましょう!」
診断士×産業医の視点と解説
多くの経営者は「欠勤率」や「休職者数」を指標として管理していますが、真に警戒すべきは「出社しているのに成果が出ない状態(プレゼンティーイズム)」です。
産業医の視点(見えない不調の構造): プレゼンティーイズムの主因は、重度のうつ病や大病だけではありません。「慢性的な睡眠不足」「眼精疲労・頭痛」「重度の肩こり・腰痛」「アレルギー性鼻炎」といった日常的な不調が、思考力と判断スピードを麻痺させます。
診断士の視点(隠れコストの財務インパクト): 従業員が本来の能力の60%しか発揮できていない場合、会社は40%分の人件費を「生産性のない時間」に対して支払っていることになります。人件費の無駄遣いであると同時に、納期遅延やミスの発生による機会損失を招く最大の要因です。
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